NHK札幌放送局「 旭川市保健所 職員分散し業務」2020年12月23日 ニュースより

NHK札幌放送局「 旭川市保健所 職員分散し業務」2020年12月23日 ニュースより

新型コロナウイルス流行以来、保健所は医療機関と並んで地域医療を守るための砦の一つとなってきました。保健所では、感染の広がりを押さえるために、感染が確認されていない積極者を先回りして調べる積極的疫学調査を行ってきました。患者の発生報告が入ると、保健師が患者から接触相手の情報を聞き取り、さらにその接触者に電話連絡をして、感染した可能性のある住民に自宅待機をお願いすると共に、検査の手配をします。学校や職場において、患者の接触した相手を特定しにくい場合には、可能性のある相手全員を検査することもあります。こうして、感染の拡大を未然に抑えこみ、医療を要する患者数を減らしていくことが保健所の大きな役割の一つです。

この業務においては、患者との接触を避けるためにも、電話越しで多くの情報を聞きとることになります。聞き取った情報は、手書きでメモし、その後、定型の書類に整理したうえで、その後の対応を要する接触者のリストを作成します。接触者のそれぞれの連絡先を整理し、保健所職員で分担して、さらに電話にて対応を依頼していくことになります。このほとんどすべてが手作業でなされていることから、患者数が増加していく局面において、保健所の業務量は著しく増大し、対応が困難になる可能性も十分にありえます。

保健所の業務の効率化の必要性は多くの人に認識されていましたが、その業務は複雑であることに加えて、医療機関と異なり注目度も低いものです。そのため、その業務の実態が研究対象となることはほとんどありませんでした。我々の研究グループは、パンデミックが始まるはるか前から、各地の保健所・都道府県庁と連携し、公衆衛生行政の現場における各種作業や業務フローを把握したうえでの業務負担の軽減を目指してきた数少ない研究グループの一つです。本プロジェクトでは、この手作業でなされていた患者の移動や接触情報の聴取、接触者リストの生成や管理を自動化していくための情報技術を研究開発しています。

研究では、積極的疫学調査の負担軽減に向けて患者から行動履歴聴取とリスク評価を省力化するための各種ツールの開発、収集した情報の効率的な保存と分析手法の検討、入力したデータの国への自動報告や県によるプレスリリース生成の省力化など、公衆衛生研究者と情報系研究者とが協力をしながら保健所用情報技術の研究開発を進めています。これにより、指数的に増える患者数に対し、僅かな増員ですら手間なしには実現できなかった公衆衛生行政において、現場負担の軽減と対応力の向上を目指します。

積極的疫学調査支援_UIサンプル