設置の背景

北海道の地方都市では、今後40年間で人口と税収が半減する一方、介護負担は倍増という壮絶な状況に突入します。これは、現在の医療水準の維持を困難とし、地方都市での出生はますます減少し、人口流出が加速することが予想されます。今後は、医療用人工知能を中心とした技術革新による医療現場の生産性向上が望まれますが、 現在の医療用情報システムは総じて品質が低く、逆に医療の効率に多大な悪影響を及ぼしてきました。また、 医療分野は薬事法制による規制が強く、技術革新や普及に要するコストが極めて高いという特徴を有しています。こうした状態では、人工知能技術が、医療を支えるほどに発展し普及していくことは困難でした。

特区によって、何がどう変わるのか?

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医療用情報技術の規制緩和をもたらす特区化によって、医療用人工知能の研究開発と普及に要するコストを大幅に下げることが可能となります。こうした特区は、技術に対して高い社会的ニーズが存在し、リスクの受容に際した社会的合意も得られうる北海道にこそ設置する意義があると考えられます。そして、もし特区が実現すれば、北海道を拠点として 医療用人工知能技術の研究開発が大幅に促進され、国内他都市に対する技術供給という新たな情報産業の創出が実現します。将来的には、極東ロシアや東南アジア、アフリカ諸国を対象とした医療用情報技術の世界的な研究開発拠点への発展も期待されます。

そのために、どういう活動を行うのか?

Hokkaido
政府は、技術革新に向けた規制の実験的適用除外(レギュラトリーサンドボックス)の設置を検討してきました。そこで、ユニットとして、医療用情報技術の規制緩和を図る特区化を政策提言し、北海道全体を医療用情報技術の実験区として確立することを地方自治体や政府に提案していきます。そのために、医療用人工知能に関する基礎研究、実際に社会に役立つ応用研究に加えて、提案政策の質を高めていくための政策研究を進めます。

活動の展望

工学系単科大学にとって、政策の実現をゴールとする組織を設置することは、大きな挑戦です。しかし、そもそも 政策は、工学の発展にとって原動力です。北海道においては、苦境に喘ぐ鉄道輸送網を代替していくうえで、今後、自動運転車による都市間交通の補完が課題となっていくと考えられます。そして、その実現は、単なる技術研究だけではなく、自動運転の実現を自動運転特区という政策課題とリンクして捉える必要があります。医療用人工知能分野の研究開発も、米中の有力大学、有力企業の間での競争が激しく、我が国は後塵を拝していきました。そもそも医療用情報技術の発展が立ち遅れていた日本にとっては、「負け戦」といって良い状況です。この状況を変え、北海道の地方都市における医療の維持・発展を実現するうえでも、 今後、行政機関を始めとしたさまざまな組織との協力関係を確立し、政策提言へと繋げていきたいと考えています。